出番がふえるよ!! やったねサンソンさん!

ところでFGOの推しはサンソンさんなんですが、

もうサンソンさんにスポットがあたることはないんだ…と言い聞かせ続けていたところ、まさかのセイレムで再登場してしまったためこのようにトチ狂い、勢い余って秘蔵の参考文献をプレゼンする次第です。

 

※この先、史実の話とゲームの話が入り乱れますので、FGOを御存じない or 純粋に学術的関心、という方はお気をつけください。

  

 

①今から沼に足を踏み入れようかという方へ

死刑執行人サンソン ―国王ルイ十六世の首を刎ねた男 (集英社新書)

 鉄板です。おそらくこの新書から入ったというクラスタさんも多いのではないでしょうか。私もです。

そもそもサンソンさんに関する文献はそれほど多くありませんが、少ない中でこのように読みやすく入手しやすい文献があるのは大変ありがたいことです(拝)

サンソン家の暮らしぶり、ルイ16世マリー・アントワネットの処刑の時の話、死刑廃止論者だったこと、などだいたいのエピソードは載っています。

その上、文章が歴史系にしては叙情的なのは、著者の安達正勝さんが仏文科出身だからでしょうか。物語のような体裁でとにかく読みやすく、脳内にサンソンさんのイメージが定着している人なら、読み物としても十二分に楽しめること間違いなしです。

また、Wikipediaやここには書ききれないあらゆるエピソードが満載で、いろいろな意味でウッ…となる瞬間に幾度となく襲われるので、とにかく読んでつらくなってほしいです。

 

②とにかくサンソンさんが喋っているテキストが読みたい方へ

ギロチンの祭典―死刑執行人から見たフランス革命

なんとサンソンさんの日記が読めます。

タイトルから普通の学術書かと思いきや、380ページ中およそ200ページが革命中のサンソンさんご本人の日記です。なんてこった。

史実のサンソンさんは革命時には年齢的にぜんぜんボーイじゃないし 、マリーに直接手を下してるわけでもないんですけど、その辺大丈夫という方には本当におすすめです。インテリ公務員おじサンソンさんが史実という圧倒的リアルで心臓をガツンガツン殴ってきます。

セイレムでどうなるかはわかりませんが、史実のサンソンさんはすごいじわじわSAN値を削られていく感じで、かといってゲームのサンソンさんのようにはっちゃけるわけでもなく、本当にリアルに仕事で心身を摩耗していく様子が知性的な文章から痛いほど伝わってきます。つらいです。

一部は前に挙げた安達正勝さんの本でも引用されているので、ここでは個人的にじわじわつらい箇所を引用させていただきます。

雨月二日

 ちょうど一年前の今日、われわれは国王を連行していった。

 (略)顔色がひどく悪く、やつれていたのを見て、妻が夢にうなされたのだということがわかった。私にしてみたところで同じで、寝入りばな、夢うつつのままに国王に再びお目にかかった。

 妻はベッドから起きだすと、身づくろいもそこそこに、お祈りをはじめた。

 私がきびすを返し、寝室へ戻ろうとすると、妻は、あなたもちゃんとお祈りしなければ、と言った。

 私たちがこうだとどんなに固く信じようとも、そのような信念はごく弱いものであって、習慣によって簡単に歪みが生じてしまう。(略)この二年のあいだに、私は今まで自分が果たすべき第一の義務と見なしていたもの〔国王のために祈りを捧げること〕から、実にゆっくりとではあるが、解き放たれた。だから、私は妻の言葉にすっかり不意撃ちを喰らい、呆けたようにこう答えた、「祈る?でも、誰のために?」

 妻はしゃくりあげながら泣いた。それで私は気を取りなおし、こう言った、「神は公平だよ。地上の王国と引き換えに、国王に天国をお与えなさった。そんな国王がどうして私たちの祈りなど必要とされていよう?私たちのために祈ろう、両手を国王の血で汚した私たちのために」

そして、私はひざまづいて応誦を唱えた。

サンソンさん御本人の日記です(三度目)

ちなみに、日記の中に普通に”市民”や”同志”といった表現が出てくるので、革命ディストピアを感じたい人にもおすすめです。 

 

③もうなんでもいいから供給がほしい方へ

知られざる傑作―他五篇 (岩波文庫)

フランスの文豪バルザックによる小説がこちらです。

短編集なのでサンソンさんに関する話はこのうちの「恐怖政治時代の一挿話」という話で、国王を処刑した夜にミサ(非合法)を挙げにいったサンソンさんのエピソードが題材になっています。

クライマックスの部分は前の安達正勝さんの本でも引用されているのですが(そもそも安達さんはバルザックがご専門らしいです)、すごい文豪によるサンソンさん短編小説とかいうありがてぇ…としか言いようがないものなので、いくつかの文献を読んでしまってとにかく飢えているという方には一読の価値はあると思われます。全集などにものってますし。

個人的に好きなシーンは司祭の家のまわりをうろうろして怖がられるサンソンさん(ガタイがいい)です。

 

 

以上、新たに沼に落ちてくる人がいたときのための歓迎プレゼンでした。

11月29日未明現在、セイレムでどうなるかまだ戦々恐々としておりますが、

とにもかくにも☆2アサシン サンソンさんをよろしくお願いします。

あの...ほんと…文学部がある大学図書館や大きめの図書館ならどれかあると思うので…この機会にぜひ………そしてあわよくばサンソンさんください

 

ルソーの性癖のはなし

ルソーといえば、『社会契約論』の著者、18世紀最大の思想家(の一人)、むすんでひらいての作曲者、など名前を聞いたことのある方も多いでしょう。そんなルソーですが、他にその性癖でも有名ですね。

 

 

10~12歳のころ 寄宿先の牧師の妹から受けた尻打ちの体罰に、目覚める

 

16歳 徒弟奉公時代、遊びに行った夜に、町の城門の締まる時間に間にあわず、   

   翌朝親方の家に戻らないまま出奔。この支配からの卒業。

   この後、職を転々としている間に、自慰を覚える。

 

16歳 仕事先でリボンを盗み、その罪を好意を抱いていた少女になすりつける

17歳 上の事件で解雇され、鬱屈した欲望を抱き、街中で露出狂になる

  

20歳 ヴァランス夫人(13歳年上)の愛人になる

   ※ルソーがヴァランス夫人に初めて出会ったのは15歳のとき。

     お互い「坊や」「ママン」と呼び合う仲。

26歳 旅から戻ると、夫人には新しい愛人ができており、冷たく迎えられる

 

34歳 パリで、テレーズ・ルヴァスール(後の妻)と出会う。

   5人の子供をもうけるが、全員孤児院へ送る。

 

42歳 パリからジュネーヴに戻り、ヴァランス夫人と再会するが、

   零落した夫人を助けることができず、激しく後悔する。

 

45歳 小説『ジュリー』の執筆中、ドゥードト夫人(当時26歳)に出会う。

   夫人と女主人公を重ね、”全生涯で最初にして唯一の恋”をする。

 

 

この後も、激しい被害妄想を患ったりいろいろあるルソーですが、以上の話の大部分を自伝の『告白』で暴露している辺りも、性癖なんではなかろうかと勘繰ってしまう次第です。

 

※参考図書は、永見文雄さんの『ジャン=ジャック・ルソー―自己充足の哲学』(2012年、勁草書房)など