世界史小ネタ帳

本から拾ってきたことをやたらめったらメモします

"いずれにせよ普通ではない"アベラール

世界史でアベラールといえば?と聞かれると、あの中世の…普遍論争あたりの…というどうしてもあいまいなイメージに留まってしまいます。余計なことでもいいから、と言われても、修道女と…恥ずかしい手紙をやり取りした…くらいしか出てきません。

 

ところが、『世界文学大事典』のアベラールの項を見ると、

  いずれにせよ普通ではない。

何とも心惹かれるフレーズを発見してしまい、調べれば調べるほど深みにはまる、鵺のような存在でした、アベラールってやつは。

 

 

アベラールのここが普通じゃない!

 

 ・生徒の一人だったエロイーズ(当時17歳、アベラールは39歳)と恋愛結婚

 ・その後エロイーズは修道院へ、アベラールはエロイーズの親戚に去勢される

 

  有名な往復書簡はこのお互いが修道生活に入った後に交わされたものです。

  すでにどうかと思うエピソードですが、ここからが上記のフレーズが事典に登場するあたりで、

 

 ・アベラールという名前は大学生になってから使い始めた通り名

 ・通り名の由来は不明(家名や出身地に由来するものでない)

 ・小さな城の城主の長男だが、家督を継いでいない

 

  なんだか雲行きがあやしくなってきました。

  そもそもアベラールは本名ではなかったようです。

  由来は不明とされていますが、元ネタと思われるものは指摘されており、

 

 ・”アベラール”は旧約聖書アベル(兄カインに殺された弟)の形容詞形

 

  何とも不穏です。

  家のことで何かあったのだろうかと想像は膨らみますが、すべて憶測にしかなりません。

  そして極めつけはこれ。

 

 ・往復書簡の中にアベラールの自伝とされるものがあるが、

  そもそも書簡自体、フィクションかそうでないのか不明

 

   ちゃぶ台をひっくり返されます。

 

アベラールの生涯の詳しい話は、書簡のうちの第1の手紙に依っているものがほとんどで、前述の去勢エピソードもこの類のものです。しかしこの往復書簡自体、アベラールが書いたフィクション小説なのでは?そもそもアベラール本人が書いたものではないのでは?など、未だに結論が出ていません。そんな…と言いたくなるようなオチです。

結局のところ事実が確認できるのは、学者アベラールが実在したというあたりだけなので、やはり、アベラールといえば?という問いには、あの中世の…普遍論争あたりの…という曖昧な答えで正解のようです。